地球観測用光学フィルター

システムをその内部から客観的に観察することが非常に難しい場合に、外部から観察することによって環境に対する独自の洞察がもたらされることがよくあります。 1960年代に、「slip the surly bonds of earth」(地上の束縛から逃れる)のための機能が確立されると、地球観測(EO)のための機能を備えた衛星を配備し、上空から地球を観測する能力を開発する競争が始まりました。 1972年にNASAが打ち上げた最初の宇宙マルチスペクトルイメージャ(multispectral imager :MSI)であるLandsat-1から、現在、普及している一群の商業用キューブサットにいたるまで、EOシステムは、対象とする光信号をノイズと区別する機能に頼っており、多くの場合に波長選択的光学フィルターが使用されています。

光学フィルターは、その特性により、一緒に使用される機器に波長選択性を付与します。 EOシステムにおいては、様々な化学組成を有する様々な大気や地球上の成分から反射、透過、または吸収される固有の波長領域を利用して、対象とする特定の現象を表す固有のスペクトル特性を観察できるようにするために、単一の選択的波長領域が必要になることがよくあります。

光学フィルターは、対象とする1つの波長領域を調べるためのシングルバンドパスフィルター(BPF)で、または、1台の検出器を様々な波長および対象とする関連現象を分析できるマルチスペクトルデバイスに変えることが可能なマルチゾーンフィルター(MZF)アレイで、システムに波長選択性を付与することが可能です。

 

マルチゾーンフィルターアレイにより、単一の検出器は、マルチスペクトルイメージングデバイスに変わります。マルチスペクトルイメージングデバイスでは、ピクセルの各行が、対象とする様々な波長選択性のある科学的バンドをイメージングおよび検出します。

イリディアンのMZFは、1)モノリシック基板上に個々のゾーンをパターン形成かつ蒸着する、2)個々のバーを単一の堅牢なアレイ(「butcher-block」)に機械的に組み立てる、3)組立ゾーンとパターン形成(黒シームやレターボックスコーティングなど)とを組み合わせるハイブリッドアプローチ、4)複数のパターン形成ゾーンを組み立ててより大きな「butcher-block」アレイにする真のハイブリッド、の4通りで製造することができます。

一般的なMZFアレイの性能に関する要求仕様として、下記のものが挙げられます。

  • 各領域内での高透過率の狭帯域パスバンド領域
  • 領域外および領域間における、広範かつ高いブロッキング性能
    • 高透過率から高ブロッキングへの急激な遷移をもたらす急峻エッジ
  • 利用可能なピクセルを最大にする、制御された狭いゾーン間遷移幅
    • 一般に、パターン形成されたアレイに対しては、<50um、「butcher-block」アレイに対しては、<200um。
  • 衛星軌道上でも耐えうる堅牢性(太陽放射に対する耐久性)
  • 打上げ時の過酷さにも耐えうるアレイ構造

シングルバンドフィルターによって、受信器(イメージャ/検出器)が、対象とする特定の波長領域を選択的に受信することができます。 一例として、ESAのメテオサット(Meteosat Third Generation:MTG)高感度光学イメージャが挙げられます。この装置は、高い均一性を持つ狭帯域バンドパスフィルターを使用することによって、777.4nmで三重項酸素吸収線を選択的に検出します。

上記の狭帯域バンドパスフィルターは、ESAプログラムであるメテロサット(MTG)の枠内で、高感度光学イメージャに関するLeonardo S.p.aとの契約下で開発されています。

一般的なバンドパスフィルターの要求仕様として、下記のものが挙げられます。

  • 高透過率の狭帯域パスバンド領域
  • 帯域外における、広範で高いブロッキング性能
    • 高透過率から高ブロッキングへの急激な遷移をもたらす急峻エッジ
  • 高均一性(多くの場合、フィルターの直径は150mm以下)
  • 優れた透過後波面誤差と表面品質
    • イメージの完全性の保護
  • 衛星軌道上でも耐えうる堅牢性(太陽放射に対する耐久性)

図1.高い均一性を持つ大面積狭帯域バンドパスフィルター(直径125mm)での中心波長の空間的変化。

宇宙用光学部品

イリディアンは、個々のフィルターとマルチスペクトル素子を製造しており、これらをテストして、衛星軌道および宇宙環境における適格性を確認しています。 イリディアンは、「Canadian Controlled Goods Program」の登録参加者です。

当社のフィルターが合格した宇宙環境適格性確認試験の項目として、下記のものが挙げられます。

  • 放射線への曝露(γ線、プロトン、太陽紫外線と電子の組み合わせ)
  • 熱サイクル/衝撃/生存試験(液体N2への浸漬から沸騰エタノールへの浸漬を含む)
  • 振動試験
  • 1MW/cm2超でのレーザー損傷特性試験
  • 50K~450Kの熱真空循環試験
  • ASTM-E595に準拠した脱ガス試験
  • MIL-C-48497Aに準拠した信頼性

イリディアンには、業界をリードする、地上システム向け光通信フィルターおよびデータ通信フィルターを、20年以上にわたって製造してきた実績があります。 この通信フィルターに関するノウハウを、地球観測などの衛星アプリケーションで使用されているフィルターを備えた宇宙用光学部品と組み合わせ、そのノウハウを航空宇宙および特殊光学専門グループがサポートすることで、初期仕様および設計から当社のオタワ工場(カナダ)での大量生産にいたるまで、お客様をサポートします。

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